登録第6227557号:「IQube」、指定商品・役務:第9,28類の各商品の商標は、
登録第5576262号商標:
青色の立方体をモチーフとした図形内に白い切り込みと中央上部に水色の横長菱形の図形を配し,その下に,間隔を設けて,「i」と「cubE」の欧文字を「・」(中点)で結合した「i・cubE」を,サンセリフ(字画末端部に爪のような張り出し部がない)のやや太い線からなる黒色の書体により表してなる構成
と類似する、とされて一旦は登録が認められませんでした。
そこで、登録が認められないのはおかしい、として拒絶査定不服の審判(不服2019-002455)が請求されました。
では、審判でどんなやりとりがあったか紹介します。
まず、この商標の
「文字は,辞書類に載録された成語とは認められないから,特定の語義を有しない一種の造語として理解され,特定の観念を生じないものである。」
そして、
「特定の語義を有しない欧文字は,一般に,我が国において親しまれた英語読み又はローマ字読みに倣って称呼されることから,「IQube」の欧文字からなる本願商標は,英語の読みに倣って「アイキューブ」の称呼を生じるものである。」
したがって、
「「アイキューブ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
一方、引用商標の
「文字部分の構成中の「c」,「u」,「b」の各文字は,曲線部分をそれぞれ直角に表し,「E」の文字は「c」及び「u」の文字と縦幅が揃うよう小さく表してなり,文字部分の構成は,全体としてシンプルでやや角張った印象を与える統一的なデザインが施されていることから,まとまりのよい一体的なものとして把握されるものである。」
そして、
「図形部分と文字部分とは,図形からなるものと欧文字及び記号からなるものとで構成態様が異なること,間隔を設けて配置されていること,異なる色彩で表されていること,および,文字部分が一体的に書されているものであることから,両者は視覚上,明確に分離して看取されるものである。」
また、
「図形部分は,構成全体として立方体をモチーフとした図形と認識され得るものの,直ちに特定の意味合いを表すものとして理解され,親しまれているというべき事情は認められないことから,図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。」
さらに、文字部分を構成する「i・cubE」は、
「まとまりのよい一体的なものとして把握されるものであるところ,その構成全体として辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから,構成全体をもって,特定の語義を有しない一種の造語として理解され,特定の観念を生じないものであり,上記(1)と同じ理由により,英語の読みに倣って「アイキューブ」の称呼を生じるものである。」
したがって、
「「i・cubE」の文字部分は,「アイキューブ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
つまり、
「その構成上,図形部分と文字部分とは,それぞれが視覚上分離して看取されるものであって,かつ,観念上のつながりもないことから,両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難い。」
そうすると、
「その構成中の図形部分及び文字部分が,それぞれ独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るといえるものであるから,引用商標は,その構成中の「i・cubE」の文字部分を要部として抽出し,当該文字部分のみを本願商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである(以下「i・cubE」の文字部分を「要部」という場合がある。)。」
したがって、
「その要部たり得る「i・cubE」の文字部分に相応して「アイキューブ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
そこで、両者を比較すると、
「外観においては,図形の有無の差異を有することから,全体の構成を異にするものである。」
文字部分を比較しても、
「「I」と「i」,「ube」と「ubE」のつづりがそれぞれ共通するとしても,構成上,欧文字5つからなるのと,1つの記号と欧文字5つからなるのとで異なる上,欧文字の2文字目が「Q」と「c」とで異なり,」
「これらの差異がともにわずか5文字又は1つの記号と5文字という少ない文字等の構成からなる本願商標と引用商標の要部の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく,両者は別異の語であるとの印象を強く与えるものである。」
また、
「文字の態様においてもデザイン化の有無の差異を有することからすれば,両者は,視覚的な印象が著しく相違し,外観上,判然と区別し得るものである。」
称呼は、
「共に「アイキューブ」の称呼を生じるから,称呼上,同一である。」
観念は、
「特定の観念を生じないから,比較することができない。」
したがって、称呼が共通していても、
「両者の構成及び態様において際立った差異を有するものであって,その印象が著しく相違し,判然と区別し得るものであり,また,観念においては,比較することができないものであるから,」
非類似の商標とされました。
今回は、称呼が共通する商標の類否が問題となりました。
称呼が共通していても、外観が著しく異なり、観念でも比較できなければ非類似と判断される場合が多いです。
見かけを大きく異ならせることが真似とは言わせないツボになります。
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