登録第6222420号:2本の黒色の曲線を組み合わせた図形の下に,間隔を設けて,「VIORA」の欧文字を横書きしてなる構成、指定商品・役務:第10類の「治療用機械器具(歯科用のものを除く。),光線治療器(歯科用のものを除く。)」の商標は、
登録第4165858号商標:
「BIORA」の欧文字を,サンセリフ(字画末端部に爪のような張り出し部がない)のやや縦長の書体をもって,各文字の間隔を狭く表してなる構成
と類似する、とされて一旦は登録が認められませんでした。
そこで、登録が認められないのはおかしい、として拒絶査定不服の審判(不服2019-001700)が請求されました。
では、審判でどんなやりとりがあったか紹介します。
まず、この商標の
「文字部分は,セリフ(字画末端部の爪のような張り出し部)を有する標準的な活字体の書体をもって,まとまりよく一体的に表されているものである。」
図形部分は、
「2本の黒色の曲線を組み合わせた図形からなるものであるが,直ちに特定の意味合いを表すものとして理解され,親しまれているというべき事情は認められないことから,本願図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないものである。」
文字部分は、
「辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから,特定の語義を有しない一種の造語として理解され,特定の観念を生じないものであり,また,特定の語義を有しない欧文字は,一般に,我が国において親しまれた英語読み又はローマ字読みに倣って称呼されることから,英語の読みに倣って「ビオラ」又は「バイオラ」の称呼を生じるものである。」
したがって、
「「VIORA」の欧文字からなる本願文字部分は,「ビオラ」又は「バイオラ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
そうすると、
「その要部たり得る「VIORA」の文字部分に相応して「ビオラ」又は「バイオラ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
一方、引用商標は、
「その構成中の「O」の文字はその内部を灰色に着色し,「R」の文字は中央部を切り離して表し,構成全体としてシンプルで統一的なデザインが施されているものである。」
そして、
「「BIORA」の欧文字は,辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから,上記(1)エと同じ理由により,英語又はローマ字の読みに倣って「ビオラ」又は「バイオラ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
したがって、
「その構成文字に相応して「ビオラ」又は「バイオラ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
そこで、両者を比較すると、外観については、
「「IORA」のつづりが共通するとしても,文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において「V」と「B」の文字の差異を有し,この差異がともにわずか5文字という少ない文字構成からなる両者の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく,両者は別異の語であるとの印象を強く与えるものである。」
また、
「文字の態様においてもデザイン化の有無の差異を有することからすれば,両者は,視覚的な印象が著しく相違し,外観上,判然と区別し得るものである。」
称呼は、
「ともに「ビオラ」又は「バイオラ」の称呼を生じるから,称呼上,同一である。 」
観念は、ともに
「特定の観念を生じないから,比較することができない。 」
したがって、
「称呼を共通にするとしても,外観においては,全体の構成を異にし,かつ,本願商標の要部と引用商標との対比においても,両者の構成及び態様において際立った差異を有するものであって,その印象が著しく相違し,判然と区別し得るものであり,また,観念においては,比較することができないものであるから,」
両商標は、非類似の商標とされました。
今回は、称呼が共通する商標の類否が問題となりました。
称呼が共通していても、外観や観念で違いがあれば非類似の場合があります。
短い文字構成にして違いを目立たせることが真似とは言わせないツボになります。
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