登録第6144109号: 右上に枝状に伸びる線を赤色で表し、その余の部分は黒色で表したY字状図形を、三つ、図形の線の太さと同程度の間隔を空けて右方向へ一つずつずらして重ねた図形と、その右端の枝状に伸びる線の下に、小さな縦長の平行四辺形及び全体の三分の一ほどの高さのS字状図形を黒色で表して結合させた、特徴的な構成からなる一種の幾何図形というべき図形を上段に配し、その下段にややスペースを空けて、「Y’S CABIN」の欧文字を、「Y」の文字は他の文字に比してやや大きく、「S」と「C」の間はやや間隔をあけて、各構成文字を黒色で同じ書体をもってまとまり良く一体に横書きした構成、指定商品・役務:第43類の各役務の商標は、
登録第3166489号商標:
左斜め下に傾く楕円型の輪郭線に、「Y’s」の欧文字を太文字で大きく表して重ねた構成
と類似する、とされて一旦は登録が認められませんでした。
そこで、登録が認められないのはおかしい、として拒絶査定不服の審判(不服2018-008475)が請求されました。
では、審判でどんなやりとりがあったか紹介します。
まず、この商標の
「上段の図形部分(以下「本願図形部分」という。)と、下段の文字部分(以下「本願文字部分」という。)とは、間隔を空けて配置されており、両部分は、視覚的に分離して看取されるものであって、各構成部分がそれを分離して観察することが、取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。」
してみれば、
「本願図形部分及び本願文字部分がそれぞれ独立して、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。」
そして、
「本願図形部分は、我が国において特定の事物を表したもの、又は特定の意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は見いだせないことから、これよりは、特定の称呼及び観念は生じないものである。」
また、
「本願文字部分は、上記のとおり、同じ色、同じ書体でまとまり良く一体的に表されているところ、構成中の「’S」が、縮約語や所有格を表す英語であり、「CABIN」が「船室、客室」を意味する英語(いずれも「ジーニアス英和辞典第5版」株式会社大修館書店)であるとしても、「Y’S CABIN」の文字は、辞書等に載録がないものであって、特定の意味合いを有しない一種の造語として認識されるといえるものである。」
そうすると、
「「ワイズキャビン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。」
一方、引用商標は
「構成中の楕円型の輪郭線は、装飾的に配置された背景図形として看取されるものとみるのが自然であり、特定の称呼及び観念を生じるとはいえないものである。」
そして、
「構成中の「Y’s」の文字は、辞書等に載録がないものであって、特定の意味合いを有しない一種の造語として認識されるといえるものであるから、引用商標からは、その構成文字に相応して「ワイズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。」
そこで、両商標を対比すると、外観は、
「本願図形部分及び「CABIN」の文字の有無により、明確に区別し得るものである。」
また、
「本願図形部分は、特徴的な構成からなる一種の幾何図形と認識されるものである一方、引用商標は、楕円型の輪郭線と欧文字を重ね合わせた構成からなるものであって、外観上の印象が明らかに異なり、判然と区別し得るものである。」
そして、
「両者は「CABIN」の文字の有無の差異から、外観上の印象が明らかに異なり、判然と区別し得るものである。」
次に、称呼においては、
「本願商標から生じる「ワイズキャビン」の称呼と、引用商標から生じる「ワイズ」の称呼を比較すると、両称呼は、その音数及び音構成において明らかな差異を有するものであるから、両商標は、称呼上、明瞭に聴別されるものである。」
そして、観念においては、
「特定の観念を生じないものであるから、観念上比較することができない。」
そうすると、
「本願商標から生じる「ワイズキャビン」の称呼と、引用商標から生じる「ワイズ」の称呼を比較すると、両称呼は、その音数及び音構成において明らかな差異を有するものであるから、両商標は、称呼上、明瞭に聴別されるものである。」
とされました。
今回は、商標の構成の一部が共通する商標の類否が問題となりました。
一部の構成が共通していても、他の要素が大きく異なって区別できるのであれば、非類似となる場合があります。
見た目を大きく異ならせることが真似とは言わせないツボになります。
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