登録第5987430号:上段に,円輪郭の内側に,その輪郭線に沿って配置した3個の「S」をらせん状の線で繋げた装飾を施してなる図形を表し,その下段に「BISYU」の欧文字を表してなる構成、指定商品・役務:第25類の各商品の商標は、
登録第5690770号商標:
上段に漢字の「尾」をモチーフにして図案化したものと思われる図形を表し,その下段に「BISHU」の欧文字を表してなる構成
と類似する、とされて一旦は登録が認められませんでした。
そこで、登録が認められないのはおかしい、として拒絶査定不服の審判(不服2017-007221号)が請求されました。
では、審判でどんなやりとりがあったか紹介します。
まず、この商標の
「上下段部分は,間隔を開けて配置されており,図形と文字という構成要素の違いもあいまって,両者は視覚上分離して認識されるものであるから,両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものということはできない。」
そして、
「「BISYU」の欧文字部分からは,「ビシュウ」との称呼が自然に生じるところ,」
「「尾州倉庫株式会社」を「BISYU WAREHOUSE」(www.bisyu.co.jp),「尾州墓守」を「bisyu hakamori」(www.bisyu−hakamori.com),及び「尾州木材工業株式会社/株式会社ビシュウ」のロゴとして図案化した「BISYU」(www.bisyu.jp)などのように,「BISYU」(bisyu)の欧文字が,漢字「尾州」のローマ字表記として用いられていることが少なからずあると認められる。」
そうすると、
「「BISYU」の欧文字部分は,「尾張の国の別称」である「尾州」の語を「BISYU」とローマ字表記したものと認識,看取されるため,その指定商品である「尾州地域(現在の愛知県及び岐阜県)で製造される」商品との関係においては,単に商品の産地を表示したものと認識されるにすぎないから,これより出所識別標識としての称呼及び観念は生じないというべきである。」
したがって、
「出所識別標識としての機能を有するのは,上段の図形部分というべきであり,本願商標に接する需要者,取引者は,この図形部分を要部として取引に当たるものということができる。ただし,この要部である図形部分からは特定の称呼及び観念は生じない。」
一方、引用商標の
「上下段部分は,間隔を開けて配置されており,図形と文字という構成要素の違いもあいまって,両者は視覚上分離して認識されるものであるから,両者を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものということはできない。」
そして、
「「BISHU」の欧文字部分からは,「ビシュウ」との称呼が自然に生じるところ,」
「尾州産地の春夏素材をアピールする取り組みを「Bishu Style 2009」(甲1),尾州産地の生地メーカー16社が集結するイベントを「Bishu Material Exhibition 2018SS展」(甲2),「尾州コレクション」の英語表記を「Bishu Collection」(甲3),愛知県尾州産のウール生地を「BISHU WOOL」(尾州ウール)」(甲7),日本の繊維産業を支えてきた尾州における「『尾州(BISHU)』ブランドの取り組み」(甲10),尾州産地の紡績,織布,染色整理工場や関連団体などが運営する「尾州・テキスタイル・カレッジ」を「BISHU TEXTILE COLLEGE」(甲11),「尾州地域を巡る『Bishu Kawaii Project.』」(甲12),及び「日本が誇る毛織物産地・尾州にて行われた『The Tweed Run Bishu 2015』」(甲13)などのように,漢字「尾州」を「BISHU」(Bishu)とローマ字表記することが,織物と関連した分野においても,取引上普通に行われている実情がある。」
そのため、
「「BISHU」の欧文字は,「尾張の国の別称」である「尾州」の語をローマ字表記したものと認識,看取され,その指定商品との関係においては,単に商品の産地又は販売地を表示したものと認識されるにすぎないから,これより出所識別標識としての称呼及び観念は生じないというべきである。」
そうすると、
「出所識別標識として機能を有するのは,上段の図形部分というべきであり,引用商標に接する需要者,取引者は,この図形部分を要部として取引に当たるものということができる。ただし,この要部である図形部分からは特定の称呼及び観念は生じない。」
そこで両者のそれぞれの要部である図形部分の外観を比較すると、
「本願商標の図形部分は円輪郭内に装飾を有する図形である一方で,引用商標の図形部分は漢字「尾」を図案化した図形であるため,両者は,図形としての構成要素及び構成態様が明らかに相違する。」
そして、
「両者からは称呼及び観念は生じないため,これらにおいて比較することはできない。」
として、
その要部において明らかに外観が相違し,その称呼及び観念も比較することができないから、外観、称呼、観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから,非類似の商標とされました。
今回は、文字部分が共通する商標の類似が問題となりました。
文字部分が共通していても、その文字部分が識別性を発揮していない場合には、その他の部分で比較されます。
識別性を発揮できる部分を追加することが真似とは言わせないツボになります。
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