登録第5876316号:やや縦長のゴシック体で極太に表された「YAMASHIN」の欧文字の右横に、一部が白抜きされた黒色の大きさが異なるしずく様の図を上から3つ組み合わせた図形(以下「しずく図形部分」という。)を配してなる構成、指定商品・役務:第7、9類の各商品の商標は、
(1)登録第3176328号:
L字型及び逆L字型様の2つの黒色の太線と黒く塗りつぶした円を、円を中心に密接させて大きく表した図形部分と、その下に、横幅が図形部分と同一になるよう小さく書した「yamashin」(「y」は他の文字より大きく、「i」は「・」がない。以下同じ。)の欧文字と、一番下に「山新」の文字を書した文字部分よりなる構成
(2)登録第5415282号:
下方に山形様の切り込みを入れた、角に丸みのある赤色の正方形内に、いずれも白抜きで、上段中央に大きく「山新」の文字を、中段に横幅が「山新」の文字と同一になるよう小さく書した「YAMASHIN」の欧文字を表してなる構成
と類似する、とされて一旦は登録が認められませんでした。
そこで、登録が認められないのはおかしい、として拒絶査定不服の審判(不服2016-005454号)が請求されました。
では、審判でどんなやりとりがあったか紹介します。
まず、この商標の
「構成中の「YAMASHIN」の欧文字部分に相応して「ヤマシン」の称呼を生ずるものであり、また、該欧文字は特定の意味を有しないものであるから、観念は生じないものである。」
一方、引用商標1は、
「構成中の図形部分と文字部分は共に黒一色で統一されていることや、図形部分と文字部分の大きさや配置のバランスから、全体として、まとまった印象を強く与えるものである。」
引用商標2は、
「全体が赤と白で配色されていることや、正方形内に各文字等がバランスよく配置されていることなどから、全体として、鮮明でまとまりのよい一体的な印象を強く与えるものである。」
そしてそれぞれの
「構成中の「yamashin」及び「YAMASHIN」の欧文字は、それぞれ、引用商標1及び2の構成中の「山新」の文字の読みを表したものと理解されるから、引用商標1及び2は、その構成中の各文字部分に相応して、いずれも「ヤマシン」の称呼を生ずるものであり、」
「また、「yamashin」、「YAMASHIN」及び「山新」の各文字は、それぞれが特定の意味を有しないものであるから、引用商標1及び2は、いずれも観念が生じないものである。」
そこで、各商標と対比すると、外観は、
「明確に区別できるものである。」
称呼については、
「「ヤマシン」の称呼を共通にするものといえる。」
観念については、
「いずれも特定の観念を有しないものであるから,観念上,比較することはできない。」
称呼は、
「共に「エスカー」の称呼を生じるものであるから,称呼において共通する。」
観念は、
「いずれも観念を生じないものであるから、比較することができないところ、両者が観念上相紛れるおそれがあるとする特段の事情は見いだせない。」
よって、
「「ヤマシン」の称呼を同一にするとしても、外観において明確に区別できるものであり、また、観念において紛れるものでも」なく、
「商品及び役務に係る取引の実情を考慮し、外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等により総合的に考察すると、両商標は、それぞれ商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標である。」
とされました。
今回は、称呼が共通する場合の類似が問題となりました。
称呼は共通どころか同一なので、外観に違いがあっても非類似になるのは難しいですが、今回は、会社名の一部という事情もありそうです。
自分の名称であれば、外観などを異ならせることによって、真似とは言わせないようにすることが可能な場合もあります。
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