登録第5874797号:「ESCAR」、指定商品・役務:第25、35、40、42類の各商品・役務の商標は、
(1)登録第4820459号:
構成中の「S」及び「C」をやや小さくした「ESCA」の欧文字を横書きし,「C」と「A」の間には波線を模した図形を赤色で配し,かつ,その中央上部には「エスカ」の片仮名を配してなる構成
(2)登録第5229788号:「ESCA」
(3)登録第5729504号:
構成中の「エ」及び「E」の各縦線部分を太字にした「エスカ」の片仮名と「ESCA」の欧文字を,二段に表してなる構成
(4)登録第5749293号:
「E」の縦線部分を太字にした「ESCA」の欧文字を横書きしてなる構成
(5)国際登録第905198号:
「ESKER」の欧文字をローマン体で横書きしてなる構成
と類似する、とされて一旦は登録が認められませんでした。
そこで、登録が認められないのはおかしい、として拒絶査定不服の審判(不服2016-002457号)が請求されました。
では、審判でどんなやりとりがあったか紹介します。
まず、この商標の
「構成態様は,縦長のサンセリフ体で,隣り合う文字と文字との間にそれぞれ1文字分程度の間隔を空けて表してなるものである。」
とすると、
「その構成文字に相応して「エスカー」の称呼を生じるとみるのが自然であり,また,「ESCAR」という単語は,我が国でなじみのない語であるから,本願商標からは,特定の観念を生じないものである。」
一方、引用商標1は、
「「ESCA」及び「エスカ」の各文字はいずれも我が国においてなじみのない語であるから,特定の観念を生ずることのない一種の造語として認識されるというのが相当である。」
「また,構成中の「エスカ」の片仮名が,「ESCA」の欧文字の読みを特定したものと理解し得る。」
したがって,引用商標1は,
「「エスカ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
引用商標2の文字は、
「我が国においてなじみのない語であるから,特定の観念を生じない一種の造語として認識されるというのが相当である。」
したがって,
「その構成文字に相応して,「エスカ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
引用商標3の文字は、
「いずれも我が国においてなじみのない語であるから,特定の観念を生ずることのない一種の造語として認識されるというのが相当である。」
「また,構成中の「エスカ」の片仮名が,「ESCA」の欧文字の読みを特定したものと理解し得る。」
したがって,
「「エスカ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
引用商標4の文字は、
「我が国においてなじみのない語であるから,特定の観念を生じない一種の造語として認識されるというのが相当である。」
したがって,
「その構成文字に相応して「エスカ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
引用商標5の文字は、
「英和辞典に「小石や砂が堆積してできた,細長い,時に曲がりくねった堤防状地形」(ランダムハウス英和大辞典第二版)の意味を有する語である旨の記載はあるものの,我が国において,該文字がそのような意味を有する語として一般に知られているとは認め難いことから,特定の意味合いを有しない造語として認識される
ものとみるのが相当である。」
したがって,
「「ESKER」の構成文字に相応して「エスカー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。」
そこで、各商標と対比すると、引用商標1ないし引用商標4との類否については、
「全体の構成が著しく異なるものであり,外観において明確に区別できるものであるから,両者は外観上相紛れるおそれはない。」
称呼については、
「両者は,語尾において,長音「ー」の有無の差異を有するところ,本願商標の「エスカー」の称呼は,語尾に長音を伴うことにより,余韻をもって聴取されるものであるのに対し,」
「引用商標1ないし引用商標4の「エスカ」の称呼は,終わりが途切れ,つまったように聴取されるものであるから,両者の4音及び3音という比較的短い音構成において,該差異音が称呼全体に及ぼす影響は小さいものとはいえず,両者をそれぞれ称呼しても,語調,語感が相違し,互いに聴別し得るものである。」
観念については、
「いずれも特定の観念を有しないものであるから,観念上,比較することはできない。」
また、引用商標5に対して、外観は、
「一見して異なるものとして看取される。さらに,両者は,共に5文字という比較的短い文字列にあって,構成文字の3文字目と4文字目(「CA」と「KE」)に明らかな差異を有するものであるから,該差異が両商標の構成全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえない。したがって,両者は外観において明確に相違し,相紛れるおそれはないというのが相当である。」
称呼は、
「共に「エスカー」の称呼を生じるものであるから,称呼において共通する。」
観念は、
「いずれも特定の観念を有しないものであるから,観念上,比較することはできない。」
そうすると、
「称呼において共通するとしても,構成文字の明確な相違により,外観上判然と区別し得る差異を有するものであり,看者が両商標から受ける印象は明らかに異なるものであって,観念においても比較し得ないから,取引者,需要者に与えるこれらの印象,記憶,連想等を総合的に勘案すれば,両商標は,同一又は類似の商品に使用しても,商品の出所について混同を生ずるおそれはない非類似の商標というのが相当である。」
とされました。
今回は、称呼が共通する場合の類似が問題となりました。
称呼が共通していても、指定商品等との関係から外観や観念が大きく異なる場合には非類似となります。
違いを見せられるところは大きく異ならせることが、真似とは言わせないツボになります。
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