登録第5619536号:「朋栄」、指定商品・役務:第9類の商標は、
登録第4716350号商標:
上段に右斜体の太字で表された「H」及び「EI」の欧文字と、その間に二つの三日月を向き合わせたような図形を横一列に表し、その下段に上記文字の幅で横長矩形を配し、その中央から右端にかけていまだ普通の域を脱しない程度に書してなる右斜体の「SANGYO」の欧文字を白抜きで表した構成
と類似する、とされて一旦は登録が認められませんでした。
そこで、登録が認められないのはおかしい、として拒絶査定不服の審判(不服2013-006312号)が請求されました。
では、審判でどんなやりとりがあったか紹介します。
まず、この商標は、
「「朋栄」の漢字を標準文字で表してなるところ、該文字は、辞書に載録された成語であるとは認められないものの、これを構成する「朋」と「栄」の文字は、いずれも「ともだち。」、「さかえる。」の意味を有するものとしてよく知られている漢字といえるから、「朋」と「栄」の文字が有する意味を組みあわせた「ともだちがさかえる」程の意味合いを生じるものというのが相当である。」
「また、本願商標からは、その構成文字に応じて「ホウエイ」の称呼が生じるものである。」
一方、引用商標は
「その構成中、上段の二つの三日月を向き合わせたような図形は、近時商業広告等において、しばしばそれに使用する文字の一部あるいは全部を図案化する手法が用いられていること及び該図形の前後が欧文字であることに照らせば、看者をして、欧文字「O」を表したものとして無理なく認識できるものであるから、上段は、「HOEI」の欧文字を表してなるものと認められる。」
そして、
「「HOEI」の欧文字部分は、大きく顕著に表されており、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというのが相当であるから、引用商標は、該欧文字部分を分離、抽出し、他人の商標と比較して類否を判断することが許されるというべきあり、該欧文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえる。」
「また、「HOEI」の欧文字は、辞書等に載録が認められない語であって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語をローマ字表記したものと認識されるものであるところ、ローマ字表記においては、しばしば長音符やハイフンなどの記号を用いずに長音を表すことがあるから、引用商標は、該欧文字部分より「ホーエイ」の称呼をも生じるものであって、特定の観念を生じないものである。」
そこで、引用商標と比較すると、
「その文字構成の差異を有するものであるから、外観において相紛れるおそれのないものである。 」
観念については、
「本願商標は、「ともだちがさかえる」程の意味合いを生じるのに対し、引用商標は、特定の観念を生じないものであるから、観念についても区別できるものである。」
称呼については、
「本願商標は、「ホウエイ」の称呼を生じるのに対し、引用商標は、「ホーエイ」の称呼をも生じるものである。そして、両者は、「ホ」、「エ」及び「イ」の音を共通にし、「ウ」の音と「ホ」の長音(ー)に差異を有しているものであるところ、前者の「ウ」の音は、前音「ホ」の母音(o)と二重母音を形成する結果、前音の母音(o)をそのまま延ばす長音の如く発音され、後者の「ホー」の音とは、ほぼ同一の音として聴取されるものといえるから、」
「両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が近似するものであり、称呼上類似するものである。 」
しかし、
「称呼において類似するとしても、外観において、相紛れるおそれのないものであり、観念も区別できるものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に考察すると、本願商標と引用商標を同一又は類似の商品に使用した場合、その商品の出所について誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。」
とされました。
今回は、称呼が共通する商標の類否が問題となりました。
称呼が共通していても、外観において、相紛れるおそれのないものであり、観念も区別できるものであれば、出所について誤認混同を生じるおそれはない、という結論です。
外観・称呼・観念のうち、どれは一つが共通していても、残り二つをしっかり区別できるようにしておくことが、真似とは言わせないツボになります。
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